「『ペアガラスをトリプルガラスにすると、2℃~3℃温度が変わる』というYouTube動画を見たのですが、本当に変わるのでしょうか? 」というお問い合わせがありました。
動画を見てみると
さっそく、その動画を拝見しました。
動画では、スタイロフォーム(断熱材)で作った箱を家と見立てて2つ作成。それぞれにペアガラス複合サッシと、トリプルガラス樹脂サッシをはめ込んで窓としていました。それから内部に熱源を入れ、各々の温度変化を記録しています。
結果、ペアガラス複合サッシの箱よりも、トリプルガラス樹脂サッシの箱の方が、2~3℃、温度が下がりにくいということでした。つまりトリプルガラス樹脂サッシの方が、部屋の温度が下がりにくい、断熱性能が高い、という結論です。

実験内容を検証
しかし、この実験で得た【2~3℃】という温度を、そのまま家に当てはめて良いのか?と私たちは考えました。
というのは、このような縮尺実験を行なう場合、試験したい「その物」、今回で言うと窓ガラスも、同じ縮尺で作成しなければ、本来の結果は測定できないものです。
この実験では、一般的な35坪の家と比較すると、11分の1程度に縮尺してあります。つまり、実際の家で使われているペアガラスのガラスが5㎜なら、11分の1の0.45㎜に。樹脂サッシの厚さが2㎜なら、0.18㎜に縮小して実験する必要があります。
しかしこのように、正確に縮小された樹脂サッシ、ペアガラスを作ることは不可能ですね。
そこで、このような実験の場合は、得られた結果を、縮尺スケールに応じて、計算し直す必要があるのです。
今回で言えば、得られた【2~3℃】という結果を、11分の1に換算しますと…【0.18~0.27℃】となります。
この温度差が、実際の家で発生する温度差である、と考えるべきかと思います。すなわち、実際の家の場合、2~3℃変わるのではなく、0.18~0.27℃変わる、と考えられます。

私たちの結論
もう二点、考慮すべきポイントがあります。
実験に使った箱の大きさから、窓の大きさを換算すると、外面積の16%を、窓が占める状態です。一般住宅の場合、10%程度が窓面積となるケースが多いことを考えると、かなり窓の多い設定の実験と言えます。
また、この試験体は密閉されておりますが、現代の住宅には24時間換気が設置されています。2時間に1度、家中の空気を入れ替えているのです。この件は完全に無視した実験となります。
つまり、全てのペアガラスをトリプルガラスに変更したとしても、0.18~0.27℃の変化。ここに24時間換気を考慮すると、ほとんど温度は変わらない。私たちの導き出した結論です。
参考事例
エア断モデルハウスで行った暖房費の比較実験で、同じ判断ができます。
これは、アルミサッシを使用したAir断大阪モデルハウスと、樹脂サッシを使用したAir断愛知モデルハウスで、どちらの暖房費が安価になるか、という比較実験です。(こちらについては別動画をご覧ください。)
結果を言うと、アルミサッシのAir断大阪モデルハウスの方が、暖房費が安価になりました。
つまり、樹脂サッシとアルミサッシ、ペアガラスとトリプルガラス、これらの差は、室温にはほぼ関係していないと考えられます。
断熱を左右するもの
断熱に深く関与しているのは、他の要因であると判断しています。
窓のサッシ部分は家の外皮面積の1%未満。窓ガラスは10%程度です。これらを何に変えたとしても、大きな変化は考えられません。むしろ、残りの89%を占める部分の断熱材や、隙間係数であるC値が、室温を変化させる要因だと、私たちは考えています。また、24時間換気の吸排気経路を根本から見直す必要もあります。
このことから、「断熱性能が高い商品を使う=断熱性能が高まる」とは限らないこと。
そして、家の断熱性能を高めるには、吸排気経路、結露対策、そして超・長期的に気密を維持する、丁寧な作り方が重要であること。
この点をお伝えしたいと思います。あくまで弊社独自の見解ですが、ご参考になれば幸いです。
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